副業

あなたが簡単にクビにならない理由。解雇権濫用法理とは【人事担当者が解説】

心配する人

副業がばれたらクビになるんじゃないだろうか。。

安心してください。あなたはそう簡単にはクビいなりません。

なぜなら、会社が一度雇った社員をクビにするには、とてつもなく高いハードルを越えなければならないからです。

この記事では、企業の人事担当をしている私が、社員を簡単にクビにできない法的根拠「解雇権濫用法理」を解説します。

ちなみに私の勤める会社には5,000人以上の従業員がいますが、「普通解雇」される社員は年に1人もいません。

私たちの雇用はしっかりと守られています。心配は無用です。

この記事の著者
おなまえ

セミリタイアブロガー

もっての☆ほかお

motteno-hokao

プロフィール

『セミリタイアのすべてが分かる』をコンセプトにブログ運営中
東証一部上場企業のアラサー会社員(人事担当者)
2023年9月 セミリタイア予定
2021年2月 資産額 2,156万円
プロフィール詳細

解雇権濫用法理とは

終身雇用を前提とした日本の雇用システムにおいて、一度解雇されてしまうとその後の再就職先の確保や労働条件の面で大きな不利益を受けることとなります。

このことから日本では、使用者が労働者を「解雇」する権限に規制を設けており、これが「解雇権濫用法理」です。

労働契約法第16条では、次のように規定されています。

労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする

つまり、社員を解雇するには次の2つの要件を満たす必要がある、ということです。

  • 解雇に「客観的合理的」な理由がある
  • 当該社員の解雇が「社会通念上相当」である

「客観的に合理的な理由」とは

客観的に合理的な理由は、過去の判例等から、主として次の3つのいずれかに該当する場合、とされています。

  1. 労働者の労務提供の不能や労働能力、または適格性の欠如・喪失があった場合
  2. 労働者の規律違反行為があった場合
  3. 会社の経営上の必要性に基づく理由があった場合

つまり、労働者が働けなくなる、勤務成績が著しく悪い、懲戒処分対象となるような違反行為を働いた場合、あるいは会社として整理解雇する他経営立て直しが不可能な場合のみ、解雇の客観的に合理的な理由となる、ということです。

当然ですが、「あいつ気に入らないな」などといった理由では、社員を解雇することはできません。

また、仮に副業禁止規定を無視して副業をしたことがばれた(「労働者の規律違反行為」があった)としても、解雇をするには当該解雇が「社会通念上相当である」ことが必須要件となります。

「社会通念上相当である」とは

解雇に合理的客観的理由があったとしても、その解雇事由が社会的にみて「解雇されて当然だ」「解雇もやむを得ない」とみなされなければ、社員の解雇はできません。

企業は「社会通念上相当である」ことの立証がが非常に難しく大変であるため、よっぽどのことがない限り解雇できないのです。

抽象的な表現ですが、例えば、遅刻や欠勤を繰り返す社員を解雇する場合においても、事前の注意や指導などをせず、いきなり解雇することは「社会通念上相当」ではなく、解雇権の濫用となります。

つまり、解雇は「他のあらゆる手段を尽くしてもなおこれを選択する以外に方法がない」という「最後の手段」でなければならない、ということです。

解雇の正当性は使用者側に立証責任がある

最も重要なことは、解雇における「客観的に合理的な理由」および「社会通念上相当であること」は、使用者(会社)にその立証責任があるということです。

本人の勤務記録を収集し、指導・注意した記録を取り、それでも改善がなかったことを記録し、弁護士の確認の上…と、

客観的に合理的であり、社会通念上相当であること、を会社として証明することは本当に大変です。

仮に当該解雇が「無効」となった場合、会社は解雇中の賃金を遡及払いする必要があります。

このことからも、会社は当該解雇について「裁判でも勝てる」という確信がなければ解雇を行いません。

終身雇用と解雇権濫用法理はセット

あなたが簡単にクビにならない理由について、お分かりいただけましたでしょうか。

前述のとおり、解雇権濫用法理は日本の「終身雇用」という雇用システムにおいて、解雇されることの社会的ダメージを勘案し体系立てて作られた考え方です。

転職市場が活発で「ジョブ型雇用」が雇用システムの中心である欧米では、 “You are fired” と上司に突然宣告される、なんてこともあります。

終身雇用や年功賃金は近年悪者扱いされがちですが、一方で私たちの雇用を守ってくれている側面もあるのです。

今後日本の雇用システムが「ジョブ型雇用」へシフトするにあたり、解雇権濫用法理との兼ね合いが一つのハードルになっていくかもしれません。