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【比較あり】ジョブ型雇用の導入で何が変わる?阪神タイガースで解説

ジョブ型雇用を
知らない人

うちの会社がジョブ型雇用を始めるらしいけど、、、何それ?何がどう変わるの?

ジョブ型雇用、最近よく聞くけど自分には関係ない、と思っている方

人事担当者

あなたも無関係ではありません!

大手コンサルティング会社「コーン・フェリー」が今年5月に実施した調査では、日本企業の約6割がジョブ型雇用を導入済、もしくは導入予定である、という結果がでております。

今後、少なくともサラリーマンの2人に1人はジョブ型会社で働くこととなるのです。

本記事では、東証一部上場企業の人事担当者として、自社にジョブ型雇用を導入した私が「もしも阪神タイガースがジョブ型雇用を導入したら」を切り口に次の4点を解説いたします。

この記事でわかること

  • ジョブ型雇用とはなにか
  • ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
  • 日本企業がジョブ型雇用の導入を目指すわけ
  • ジョブ型雇用の導入で変わること

ジョブ型雇用に関する基礎知識

本題に入る前に、まずはジョブ型雇用の基礎をサラッと説明いたします。

人事担当者

ここで分からなくても、後々理解できるようになりますので、「サラッと」お読みいただければと思います。

ジョブ型は「仕事に人を結びつける」雇用システム

欧米で一般的なジョブ型雇用。一言で表すと「仕事に人を結びつける」、仕事(ジョブ)ありきの雇用システムです。

求人の時点で職務内容や勤務地、給与などがジョブディスクリプションによって明確に定められており、求職者はその内容に自分の希望・スキルが合っていれば応募します。

メンバーシップ型は「人に仕事を結びつける」雇用システム

一方、日本企業で一般的なのが「メンバーシップ型雇用」。一言で表すと「人に仕事を結びつける」、人ありきの雇用システムです。

メンバーシップ型の企業では、とりあえず人を雇ってから、その人に何をさせるかを考えます。

「仕事に就く」のではなく、「会社のメンバーになる」という意味合いが強いことから、よく“就職”ではなく”就社”であると言われますね。

さて、基礎が分かったところで、次の項からは、ストーリー仕立てで解説させていただきます。

  1. もしも阪神がメンバーシップ型の球団だったら
  2. メンバーシップ型の阪神に見えてきた課題
  3. もしも阪神がジョブ型の球団に転換したら

もしも阪神タイガースがメンバーシップ型の球団だったら

仮に、現在の阪神タイガースを日本企業と同じ「メンバーシップ型」の球団としてみましょう。(実際には少し違いますが…)

すると、次のように球団の運営を行うことになります。

採用はドラフト会議での一括採用

採用はドラフト会議での新卒一括採用がメインで、FAなどでの中途採用はほとんど行いません。入団する選手は、将来の「ポテンシャル」を見込まれて採用されます。

入団~定年まで終身雇用

1度入団すれば、基本的に「戦力外通告」を受けることはなく、「1球団で勤め上げる終身雇用)」こととなります。

試合に出ようが出まいが、40歳の定年退職まで雇用を保障されています。

年俸は年功序列(内部公平性を重視)

1球団で勤め上げることが基本となっているため、他球団の年俸水準が高かろうが低かろうが関係ありません。

年俸は「市場競争力」より、「内部公平性」が重視されます。

新卒で入団した選手がどれだけ活躍しようと、40歳のベテラン控え選手の年俸を超えることはありません。

なぜなら、40歳のベテラン選手も若い頃同じ待遇を受けているからです。それが、「内部公平性」を重視するということ。

つまり、年功序列です。

定期的に守備位置の変更を命じられる(ジョブローテーション)

メンバーシップ型の球団には、毎年ドラフト会議で新人選手がたくさん入ってきます。

新人のキャッチャーを1軍に配置するためには、現キャッチャーの梅野隆太郎をコンバートしなければなりません。

こういったことから、メンバーシップ型の球団では、監督から定期的な守備位置の変更を命じられます。(定期人事異動・ジョブローテーション

人事担当者

実際には、入団したばかりの新人は2軍で練習をさせるか、梅野を放出するかで配置を調整しますが、ここでは話を単純化しています。普通の会社には「2軍」は無く、簡単に「放出」もできませんので。

メンバーシップ型企業の特徴

  • [採用]新卒一括採用(ポテンシャル採用)
  • [雇用]終身雇用
  • [給料]年功序列(内部公平性を重視)
  • [異動]3年程度の周期でジョブローテーション

メンバーシップ型の阪神に見えてきた課題

1985年には日本一も達成したメンバーシップ型の阪神も、最近ではBクラスが続いていました。

メンバーシップ型の限界が見え始めていたのです。

全選手が 2割7分・10盗塁の「そつなくこなす」タイプに

メンバーシップ型雇用の下ジョブローテーションを続けていた阪神では、全選手が、打率2割7分・10盗塁の「そつなくこなす」タイプになってしまったのです。

今年4番を打ったジェリー・サンズが、

監督

来年からは、1番打者として50盗塁を目指してくれ。

と言われることもざらにあり、全選手が、1芸に秀でることのない田中秀太のような「なんでもや(ジェネラリスト)」になっていたのです。

大物メジャーリーガーの獲得にことごとく失敗

そこで阪神では、大物メジャーリーガー「マイク・トラウト(29)」を獲得しようと考えました。

しかし、メンバーシップ型の阪神タイガースでは、トラウトと同い年の陽川 尚将(年俸:1,900万円)以上の年俸を提示することができません。

内部公平性を意識しすぎるあまり、外部から優秀な人材を獲得できなくなっていたのです。

生え抜きのスター選手がFA宣言

そうこうしているうちに、生え抜きのスター選手である藤波 晋太郎が「他球団の意見も聞いてみたい」とFA宣言したのです。

年俸水準で劣る阪神タイガースに、藤波を止める術はありませんでした。

コロナ渦で監督が在宅勤務に

追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの影響で監督が在宅勤務になりました。

監督はたまに電話でサインを出すものの、選手は「自分が何をすればいいのか」わからなくなってしまいました。

高齢控え選手の人件費が球団経営を圧迫

最後に、メンバーシップ型の球団では、働き盛りを過ぎた控え選手にも高い給料を払い続けなければならず、これが球団経営を圧迫し問題となっていました。

参考記事: 「働かないおじさん」はなぜ生まれる?メンバーシップ型雇用の闇【人事担当者が解説】

もしも阪神タイガースがジョブ型雇用を導入したら

ここで阪神は、ジョブ型雇用への大転換を図ります。

さて、何が起こったでしょう?

打順によって給料が決定するようになった

阪神がジョブ型雇用になって最も変わったのは「給与体系」です。

これまで年功序列で決まっていた年俸が打順(仕事)に応じて決まるようになりました。

1番: 5,000万円、 2番: 3,500万円、
3番: 1億円、 4番: 2億円 …

そして打順(仕事)毎の年俸は、市場競争力を意識した金額になりました。

このことで、

  • 大物メジャーリーガーの獲得(優秀人材の獲得
  • FA宣言をした生え抜き選手が残留(社員の離職率低下
  • 控え選手にはそれ見合いの給与を支給(人件費削減

が実現し、スペックの高い選手が球団に集まり・残ることに、スペックの低い選手は球団を去ることになりました。

ドラフト会議への参加(新卒採用)をやめた

ジョブ型雇用を導入した阪神は、ドラフト会議への参加(新卒一括採用)をやめ、「欠員補充方式の採用」を始めました。

つまり、4番が引退したらホームランバッターを採用し、守護神が移籍したら速球派の外国人選手を獲得する、と言った具合です。

ジョブローテーションがなくなった

新卒一括採用をやめたことで「ジョブローテーション」もなくなりました。

4番は4番の仕事をしていればよく、4番の仕事ができなくなった時に引退する、ということになり、各選手の専門性が伸びました

監督のサインが無くても2番打者がバントをするようになった

ジョブ型雇用となったことで、各打順の職務内容が「ジョブディスクリプション」で明確に定義されることとなりました。

2番打者の職務内容に「送りバント」が明記されていれば、監督が在宅勤務をしていようとも、選手が勝手にバントをするようになりました。

4番打者に盗塁のサインを出しても無視されるようになった

ジョブ型導入で起こったことは、いいことばかりではありません。

4番バッターに盗塁のサインを出しても

ジェリー・サンズ

It’s not my job.

と無視されるようになったのです。

理由は4番打者のジョブディスクリプションに「盗塁」が明記されていないから。

ポテンヒットを打たれることも多くなりました。

監督(方針)の変更で突然の放出も

選手は、監督(方針)の変更によって突然放出されることが起き始めました。

パワー重視の監督から走塁重視の監督に変わったとたん、去年の4番打者が突然クビ、ということも。

メンバーシップ型の時に保障されていた雇用は、市場競争にさらされるようになったのです。

ジョブ型型企業の特徴

  • [採用]欠員補充方式
  • [雇用]仕事がなくなれば解雇もありうる
  • [給料]ジョブに応じた市場競争力を重視
  • [異動]限定的(本人の希望による)

日本企業はどうなっていく?

さて、「もしも阪神タイガースがジョブ型雇用を導入したら」はここまでにしたいと思います。

この後、阪神タイガースが優勝できるか(ジョブ型雇用が日本で成功するか)は、現時点では何ともいえません。

記載したとおり、ジョブ型雇用にはメリットもあれば、デメリットもあるからです。

また、日本では、ジョブ型雇用を採用したからといって、簡単に社員をクビにできず、ここまでドラスティックな変化は起きないかもしれません

参考記事①:日本はどうなる!?ジョブ型雇用の闇「就職できない若者」【人事担当者が解説】

参考記事②:あなたが簡単にクビにならない理由。解雇権濫用法理とは【人事担当者が解説】

人事担当者

いずれにしても、ジョブ型雇用を一つのツールとして、日本企業が国際競争力を取り戻していってくれればと思います。

最後に、あらためてメンバーシップ型雇用・ジョブ型雇用の特徴をまとめると次のとおりとなります。

ジョブ型雇用・メンバーシップ型雇用の理解を深めたい方には、こちらの本がおすすめです。

「ジョブ型雇用」・「メンバーシップ型雇用」という言葉を初めて使用した、労働政策研究所所長の濱口桂一郎氏が著者の本で、

日本がどのようにメンバーシップ型の社会になったのか、日本企業がどのようにジョブ型雇用を導入していくべきか、等が非常に分かりやすく書かれています。

私の会社で「ジョブ型雇用」を導入する際にも、勉強のために何度も拝読させていただきました。

人事担当者

最後までお読みいただきありがとうございました。